Weekend Theater 2009年4月号

このページに掲載されている記事の著作権は著者「安田 昇」にあります。
転載、転用はご自由ですが、著作権は放棄しておりません。
4-01(2009年4月3日掲載)

おはよ〜。

絶好のお花見日和です。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


エスパー坊主  法念  2

法念には鎮念という弟弟子がいた。
心が純粋で、常人には見えないものが
良く見える能力があった。
怖がりで、妖精を見るとばちが当たると
思っている法念は、鎮念の妖精話が苦手だった。
ある日二人で庭を掃除していると、鎮念が庭の植え込み
を見つめたままじっとしているので、法念は恐る恐る聞いてみた。
「鎮念、な、何か見えるのか・・?」
「はい。あそこの植え込みの根元で、小人の妖精がこちらを見ています。」
植え込みを指差す鎮念に、あわてて目を手で隠しながら法念が言った。
「よーせやい!」
4-02(2009年4月10日掲載)

おはよ〜。

夏日になりそうです。春なのに・・。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください


エスパー坊主  法念  3

法念は鎮念と托鉢に出た。農家がほとんどない
寺近くのへの托鉢は、普通のお宅や商店街が中心になった。
修行とは言え年頃の二人には、理解の無い大人達の言葉が
きつい時もあった。特に物乞いと蔑む大人の心は、大抵が自分を
律する事を学ぼうとする修行の心とは対極にあった。
当然、それを学ぶ事はひとつの托鉢の成果ではあるのだが。
もちろん、良い人間達も沢山いた。そしてそちらの方が、よりよい修行に
なる場合が多かった。人の好意に甘えすぎないように自分を律するのは、
怒りをおさえるより難しい。
「鎮念、あそこの和菓子屋、最中を沢山くれたぞ。ただ、生もの
だから、持って帰えらずその場で食えと。僧は『もなかいっぱい』
じゃ。ははは。」
法念はおなかをぽんぽんと叩いた。鎮念はたまらず走って和菓子屋へ
向かった。しばらくして鎮念がとぼとぼと帰って来た。
「どうだった鎮念。お前ももなかいっぱいになったか?」
鎮念は下をむいて首を横に振った。
「もーなかった。」
4-03(2009年4月17日掲載)

おはよ〜。

また少し寒の戻り。
ご自愛ください。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


エスパー坊主  法念  4

法念と鎮念の師匠、泰然導師は、時になまぐさ坊主と
悪口を言われるほど、修行の為なら物事に囚われない
人物だった。が、さすがに殺生を禁止している教義に反する、
弓を取り入れ、精神集中の修行と称した今回は、弟子たちからも
少し疑問の声があがった。だが導師は気にしなかった。
「殺生の道具で殺生を思わず為さず。これこそ大乗。法念、
的に向かって射てみよ。心を無にせよ。」
法念は言われた通りに素直に矢を放った。無の心は自然な念力を生み、
100発100中だった。感心した鎮念は、少し風邪気味だったが挑戦した。
そばに見えた精霊に矢を運んでもらおうとしたが、矢を放つ瞬間に大きな
くしゃみをしてしまった。驚いた精霊は矢を持ったまま空高く飛んでいった。
「鎮念!矢はどうした!矢は放ったのか?」
後ろに居た法念の問いに、鼻水だらけの鎮念が振り向いて言った。
「はなたれた。」
4-04(2009年4月24日掲載)

おはよ〜。

今日はすこし寒いそうです。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください


エスパー坊主  法念  5

大乗をめざす泰然導師は、現世の欲を乗り越えてこそ
修行の意味があると、周りからはなまぐさ坊主と罵られる
ような修行を多く取り入れた。
この日も法然をつれ、開幕戦を日本で行うメジャーリーグ
を観戦に来ていた。
「良いか法然。お前が好きな選手がピンチでも、お前の念力は封じて
応援するんだ。できるな?」
「はい。お師匠さま。」
試合は白熱し、最終回2アウト満塁、法然ひいきのチームが
1点を守りきれば勝つ場面で、守備・打撃共に優れた、
「ザ・メジャー」と呼ばれる法然の好きな選手にフライが飛んだ。
法然は捕球を手伝いたくなる念力を必死で抑えた。
選手は持ち前の俊足を生かして見事捕球したに見えたが、ボールは
グラブからこぼれ、グラウンドをてんてんとした。
「さすが ザ・メジャー」と打球に追いついた事をほめようとした瞬間の落球に、
法然は思わず叫んだ。
「だ、めじゃー!」
Weekendのトップに戻ります