Weekend Theater 2002年9月号

このページに掲載されている記事の著作権は著者「安田 昇」にあります。
転載、転用はご自由ですが、著作権は放棄しておりません。
9-01(2002年9月6日掲載)

おはよ〜。

台風のシーズンですね。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


「時間の隙間」
ディック・ハワードシリーズ

今朝、ディック・ハワードは、
朝食を日本食の定食屋でとる事にした。
日本食の定食屋は初めての挑戦だった。
店に入ると、意外と混んでいて、サラリーマンや
学生らしき男達が黙々と食べ物を口に運んでいた。
カウンター席しか空いていなかったが、
生憎その席から、メニューが遠かった。
仕方なく目の前に貼ってある「本日のサービス定食」
と書かれた紙を指差し、カウンターの中の、
場違いな程威勢の良いお兄さんにオーダーした。
出てきた定食にディックはちょっとショックを受けた。
「納豆定食」だった。
アメリカ東部出身の彼にとって「納豆」は衝撃的だった。
(食べられるのか?これ・・・)
斜め向こう側の労働者風の男が、大きな音を立てながら
納豆を箸でかき回し、一気にご飯茶碗にかけていた。
ディックは勇気を出してそれにならった。
が、箸と納豆の器とご飯茶碗を結ぶ糸ができてしまい、
どう扱って良いか分からず、手をつかって糸を
つまんでしまった。
(うわっ!なんだこれ、指にくっつくぞ!)
その時、カウンターの中の
威勢の良いお兄さんが、ディックのご飯茶碗に
豪快にかかった納豆をみて、満面の笑みと共に
聞いた。
「よっ!外人さん、納豆好きなんだね。
いつも食べてんのかい?」
ディックは指を見ながら大声で言った。
「Never!Never!」
9-02(2002年9月13日掲載)

おはよ〜。

もう秋の香りがしますね。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


伊集院 涼子
「番外編」

涼子は原宿に急ぐ黒塗りのハイヤーの窓から、
少しずつ夕暮れが早くなってゆく
繁華街の雑踏を眺めた。
原宿のそのクラブには、
ウェールズの片田舎から来た
友人の神父を連れて、
社長が待っていた。
「伊集院君、彼がシンプソン神父だ。
彼は全く敬虔なクリスチャンなんだ。
彼の村には無縁の場所を見せて
あげたくってね。」
「シンプソン神父さん…。」
しゃれのような名前のその神父は、
フロアで激しく踊る若者を見て
夢遊病のように、フロアに入って行った。
涼子と社長は思わぬ彼の行動を
あっけに取られて見ていた。
彼は何人かの若者に何事か喋ると、
大きく頷いて戻ってきた。
「何を話したんだね?」
社長が彼に聞くと、
片言の日本語で彼は言った。
「ワタシキキマシタ。『アナタ、イツ、イノリ、シマスカ?』
カレラコタエマシタ。『イエーィ!イマダヨー』
ホント、イーノリシテマス。」
9-03(2002年9月20日掲載)

おはよ〜。

本格的な秋の到来です。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


その小さな南部の田舎町にある警察署の、
少し軋む埃っぽい入り口を入ると、
南部訛りの大声が聞こえて来た。
特務捜査官ジェニー・オコンナーは、
相撲レスラーのような腹をした、
バッジがボタンほどに見える大男の
巡査の前に座った、その大声の主のじいさんを眺めながら
CIA長官の言葉を思い出していた。
(オクラホマの田舎町に、炭疽菌をばらまいている
ばあさんがいると、現地の警察署から連絡があった。
真偽を確かめて来たまえ。)
「だからうちのばあさんと来たら、何すっか分かんねェ。
何度も言ってっけど、ほんとに炭疽菌ばらまいてくるって
出かけたんだってぇ。あん?どこで手に入れた?そんなこたぁ
知るけぇ。ばあさんなら大統領のプレッツェルだって手に入れらぁ。」
じいさんは疲れる様子もなく大きな声を出し続けていた。
電話がなり、巡査はほっとしたような顔をその男に向けながら
受話器を取った。
「なに!オクラホマシティーで見つかったって?で、被害は!
え?なんだって?…ああ…うむ…なんてこった…。」
体つきに似合わない甲高い声が次第にため息に変わっていった。
受話器を耳から離し、目をむいて巡査を見つめるじいさんに向け、
ゆっくり左右に顔を振るとジェニーに向き直り、受話器を持ったまま
両手のひらを上に向け、肩をすくめて見せた。
「オクラホマシティーのJCペニーで買い物しまくっている
ばあさんを保護したよ。ばらまいていたのは『たんす預金』だ
そうだ…。」
9-04(2002年9月27日掲載)

おはよ〜。

もうすぐ衣替えですね。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


記者「塩川大臣、本当は問題の私設秘書の給与は
同族会社からの寄付だった事、ご存知だった
んじゃないですか?正直に言ってください。」
塩川「ん?何かねその冗談。ははは。
『しおじいきにいった。』なんてね。」
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