CIA特務捜査官 シリーズ
「スニーキング・ジェニー」
第二回
この州ではなぜそれが名産なのか、無言で主張するような
熟したオレンジ色の夕日の中に、
鈍かった境界線を、暮れて行く背景にだんだんとはっきりさせながら、
インビンシブル・セキュリティ社の白いビルが立ちはだかっていた。
CIA特務捜査官ジェニー・オコンナーの兆戦を喜んでいるかのようにそびえている
シリコン・バレーのそのハイテクビルは、いざスニークしてみると、
社が主力商品として売り出しているサーバー用のセキュリティシステム
を疑いたくなるほど無防備だった。
(インビンシブル・セキュリティ社が売上を伸ばしているのは、
売り先にハッキングして弱みを掴み、恐喝しているからだとの噂が
裏付けられる情報が入った。社にハッカーを集めた部屋があるらしい。
ジェニー、行って確かめてくるんだ。)
局長の言葉を思いだしながら、彼女は目的の密室の、塞いである空調口に
小さな穴をあけて、中を覗きこんだ。
「うっ!」
部屋から流れて出た空気から、予期しなかった刺激を受けた彼女はうなった。
「はっかじゃん!」
ブッシュ「イージス艦をあきらめたんだ。偵察機のひとつや二つ、
台湾に売ってやったっていいだろう。」
書記官 「し、しかし大統領、不時着した偵察機問題で対中政策が
微妙な時期です。しかもこの対潜哨戒機は打撃能力も高く、
江沢民に、あからさまな兵器売買ととられかねません。」
ブッシュ「大丈夫だって。へいきへいき。」
「時間の隙間」
日常の中、突然時間の止まる時があります。
そんな時を集めてみました。
さあ、今週は何秒止まるでしょう。
慣れない海外出張ですっかり疲れた彼女は、
ホテルの部屋に戻るとキルティングのカバーが
かかったままのベットへうつぶせに突っ伏した。
ため息をつきながら顔を横に向けると、
ベッドサイドテーブルにある電話機の、
そこだけ強調するように飛び出した赤いランプの点滅が、
ふと彼女の目に飛び込んできた。少し体を起こした彼女は、
しばらくそのランプの下に書かれた英文字を眺めていたが、
ハタと思いついたように受話器を取り上げた。
彼女は相手がでるなりしゃべり始めた。
「ちょうどよかったわ。足裏とかあるのかしら…。
あ、でもアジア式とかの方が今はいいかしら・・疲れてるし・・。」
だが彼女は電話の向こうの相手が機械的に今日の取引先からの伝言を
伝え始めると、今は消えてしまったランプと同じ位顔を真っ赤に
しながら、ランプの下の英文字を読み直した。
マッサージとは一文字違っていた。た。
その男は、長い間の引きこもり生活に、
つい最近終止符を打った。
これと言ったきっかけがあったわけでは無いのだが、
すでに30も半ばを過ぎ、自室でのアイドルお宅も
なんとなくぱっとしなくなった彼は、
意を決して渋谷へ行って見ようと、
自宅近くの駅へ向かった。券売機に近づいた彼は、
自分の目を疑った。自分が覚えている、券売機とは程遠い、
未来都市のような機械がそこにあった。
途方に暮れている彼のそばを、
思わずどぎまぎしてしまうほど短い
スカートをはいた、金髪の若い子がふたり、
しゃべりながら通り過ぎた。
「あんたもイオカードあるの?」
「うん。オッケーだよ。」
二人はカードを差して改札を通り過ぎた。
呆然としていた彼は、ハタと何か思いつたように
財布からカードを取り出した。
彼は自信を持ってそのカードを改札に差しこんだ。
だが、けたたましいチャイムが鳴り、
ゲートが閉じてしまった。
駅員がやって来て、取り出したカードを見て言った。
「お客さん、テレカじゃだめだよ。
おや、これ元アイドルの・・えっと、松本…」
「イヨカードだけど…。」