Weekend Theater
7月号-3
i-mode版

7-03
(2009年7月17日)
おはよ〜。

梅雨明けとは思えない曇天。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください。


ハードボイルドOL
伊集院 涼子シリーズ

第2部
第6回
「為替」


9日の深夜、ドル円為替相場が10分足らずの間に3円近く円高が進み、
92円台をあっさり割り込み、91円を一瞬つけるジェットコースターを演じた。
涼子は社長の緊急呼び出しを受け、社長が待つ米国大使館内の
シチュエーションルームに居た。
    「涼子君。こちらCIAのゴーディ次官。」

社長が紹介すると涼子に握手を求めたその恰幅の良い老人は、
2重あごと金縁眼鏡の奥の短気そうな目を持っていた。

    「涼子君。CIAのゴーディだ。夜中にすまないね。
    挨拶は後ほどにして本題に入らせてもらうよ。どうやら今回のドル暴落、
    米国が受けているサイバーテロと無関係では無いのではとの憶測が流れている。」

涼子は気短そうに話すゴーディが息を切ったところで、鋭いが冷静な声で言った。

    「関連性を探れということですね?G8で準備通貨として議題に上がらなかった事に
    市場が反応したという理由はあまりお気に召さないと・・。」

    「良い皮肉だ。こんな夜中にもその冴え渡った頭脳がうらやましい。説明はやぼだな。
    早速取り掛かってくれたまえ。資料とツールはこの端末から自由に引き出せるようになっている。」

微笑むように唇の端を少し上げながらゴーディは目で端末を示した。
涼子は端末に向かい、履歴の解析を始めた。
その時間に市場に入ったドル売り円買い注文の出所パターンがワシントンのハッキング手口とマッチした。
この為替劇を演出した犯人が居ることは確かだった。残したパターンは
まるでその犯人が誰かの発見を待っているようだった。
涼子はこちらがCIAである事を釣り餌に、犯人のハッキング挑戦を待った。

    「何かわかったかね。涼子君。」

ゴーディが短気そうに聞いてきたその時、涼子のディスプレイに反応があった。
涼子はガッツポーズをしながら思わず小声で言った。

    「来た!挑戦だ!」

それを小耳にしたゴーディはいきなりホットラインの受話器を持ち上げ大声で叫んだ。

    「大統領!北朝鮮です!」
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