Weekend Theater
1月号-2
i-mode版

1-02
(2008年1月11日)
おはよ〜。

新春特別版。
長いだけって話もありますが・・。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、一服の清涼剤。
ご存知、金曜ホラー劇場。
お楽しみください


ハードボイルドOL
伊集院 涼子シリーズ

第2部
第4回
「ゴールド・フィンガー

涼子はワシントンD.Cにあるエクルズ・ビルを見上げていた。
FRB議長がじきじきに出迎えてくれるのは、余程珍しいらしい。
取り囲む秘書たちが何か進言するのを、議長は首を小さく横に振り
否定し続けながら、涼子には笑顔を向けた。
涼子は社長室での社長とのやり取りを思い出していた。

「涼子君、今日も美しい。」
おべっかは、安請け合いの仕事を振って来る時の常套句だ。
「実はFRB議長のMr.バーナンキは、ハーバードの同期でね。
ハッキングで困った事があるらしいから、手伝ってやってくれないか。」
ここの所、刺激的な仕事は殆どなく、平穏に日々を過ごしていたので、
珍しく涼子も安請け合いを無条件に受けてしまった。

「ここがオペレーション・ルームです。お聞きと思いますが、ここの所の
金価格の異常な高騰につられて、金のオンライン取引で偽装取引が横行しています。
その中でもテロ国家に関わる取引は巧妙だがトータルで莫大な資金が動き、そのファンダメンタルズに
偽造通貨が絡んでいるようなのです。このままでは連邦準備制度そのものに危機が来かねない。
ここの全機能を使ってその取引を洗い出してくれませんか?」
涼子は安請け合いを後悔した。
(世界中で行われている取引を洗いだすですって!不可能に決まってるわ!)
そう思いながらもピカリと頭にひらめく物があった涼子は、説明もそこそこに、
渡されたログインパスの一覧を引きながらコンソールに向かった。
その画面切り替えや打ち込みのスピードに釘付けになった議長が、見飽きる前に
涼子はリストを打ち出した。
「これが疑われる取引とIPを頼った取引基点の所在一覧ですわ。後はスタッフを集めて細かい洗い出しを。」
議長は驚いた。
「どうやってこんなに早く割り出したのかね!」
「簡単ですわ。金取引は端数が特徴的に出ますわ。トロイオンスとグラムでの変換端数に為替の端数が
絡みますから。端数と言っても、世界の1日の取引では何億ドルにもなりますからね。たぶん偽装は辻褄を合わせる為に、
必ずこの端数を狙うと見たんです。ビンゴですわ。」
感動したように議長が言った。
「ゴールドメダル!危機を回避してくれた、まさに君にふさわしい。
ところで涼子君、なぜ勝者にはゴールドメダルを授与するかご存知かね?」
「いいえ?なぜですの?」
「金の元素記号だよ。AU」
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