Weekend Theater
10月号-3
i-mode版

10-03
(2002年10月18日)
おはよ〜。

暖かい秋ですね。

さて、今週もいよいよ週末。
一週間お疲れ様でした。
忙しい中、
一服の清涼剤。
御存じ
金曜ホラー劇場。
お楽しみ下さい。


意識が戻り始めた彼、フィリップ・マーレイは厄介な事件に巻き込まれた事を、小太りドミノ刑事の嫌味な笑顔がはっきり見えてきて、ようやく悟った。
「おやおやマーレイ君。お目覚めかね?
熱いコーヒーでもと言いたい所だが、生憎君の目の前の仏さんを棺桶に入れる前にあんたに聞いておかなきゃならない事があるんでね。
まさかこの仏さんの事は知らないなんて、サタデーナイトショーのウォルター・ マッソーよりつまらんジョークは言わんだろうね。」
答える替わりにマーレイは何者かに殴られた後頭部を、思い出したようになでた。
「ま、いいさ。署でたっぷり時間をかけて喋ってもらうさ。
いま法医学の先生が現場の検死に来たから、日本の自衛隊のように協力的にしてもらおうか。さて先生、このくたびれた雑巾みたいな男から、あるだけ記憶をしぼってやってください。」
「私はドクター・ハミルだ。早速だが、この窓は東南向きかね?」
銀縁の地味な眼鏡に似合わない赤い水玉ネクタイのその男は、窓の外を眺めながらマーレイに聞いた。
「いや、窓に向かって左側に長く日が当たるから東南東だろう。」
「・・・いい答えだ。」
驚いたようにマーレイを振り返ったハミルは続けた。
「では、この男の入って来たドアはこの南西向きのドアか?」
「そうだが、なぜそんなに方向を聞きたがるんだ?趣味か?」
「・・・悪い質問だ。私はどんな方向に人間が動くと災難に会うか研究している。」
「ちょっと待った。専門を貫いてくれんかね。
あんたの専門は検死だろう!」ドミノが体に似合わない大声をだした。
水玉のネクタイを直しながらドクター・ハミルが静かに言った。
「私の専門は『方位学』だが・・・。」
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